455. クリーピーパスタ
映画『バックルームズ』を観た。主人公は自分の家具屋の地下に、無限とも思える部屋の続く異空間を見つける。そこには、謎の家具、看板、放送、そして何かの気配…。やがて彼のセラピストもそこへ足を踏み入れるが…。
この話、以前友達の外国人と話題にした際に、クリーピーパスタだと言われた。ネット上で流布される海外版都市伝説らしい。語源は「不気味」という意味の「creepy」と、「コピーアンドペーストされて広がるテキスト」という意味の「Copypasta」の複合語で、2006年頃〈4Chan〉で作られたとされる。1990年代にチェーンメールから始まったとも、2001年の、テッドと友人が洞窟を探検するのいう内容の『テッド・ザ・ケイバー』が最初だとも…。
よく知られるクリーピーパスタを挙げるとまずはスレンダーマン。黒いスーツを着た痩せた背の高い姿で顔はのっぺらぼう。子供を襲うという。2014年、これに影響された少女が友人に刺傷を負わせるという事件が起こっている。ジェフ・ザ・キラーは自ら瞼を切り落とし、笑顔の傷をつけた連続殺人鬼。ロシアの睡眠実験の話や、ミッキーマウスやシンプソンズ等のキャラクターに関するもの、『ゼルダの伝説』や『ポケットモンスター』等ゲームに関するものもある。
『バックルームズ』に話を戻すと、元は2019年〈4Chan〉に投稿された、黄色い壁紙・蛍光灯・カーペットの部屋の写った一枚の写真(後に2003年ウィスコンシン州オシュコシュの改装前の家具店と判明)。これに多くのユーザーが、ショートストーリーを作り、部屋を増やし、そこにいる怪物等も生み出して、拡張していった…。その中の一人、ケイン・パーソンズがこれを元にしたYouTubeを2022年公開。2026年〈A24〉の配給で、彼が監督して映画化された。既に世界で2億円の興行収入を上げており、パーソンズは北米初登場1位を監督した史上最年少監督となった。
映画の感想を率直に言えば、アイディアとしてはかなり面白いと思うが、もうひと頑張りしてほしかった…。前半、バックルームズが発見された辺りは全てが謎で、不安や恐怖を掻き立てられ、良かったと思う。ただ、後半、家具屋の男の心理的な話になるとトーンダウンし、クライマックスで姿を現した怪物に追われる辺りは、かなりイマイチ。全体的な雰囲気としては、タルコフスキーや、リンチ、ウェス・アンダーソンなんかを思わせて悪く無かったのだか…。個人的には、ラストシーンで出てきたバックルームズの探求の方向でいって欲しかった。その存在自体、様々なメタファーと考えられるが。
ちなみにバックルームズよのうな空間の事を、インターネット美学でリミナルスペースというらしい。空虚であったり放棄されていたりする場所で、不気味で、寂しげで、不可思議で、しばしば超現実的に見える空間・移行の場。村上春樹のいるかホテルだ!
蚊の名残奥の部屋から奥の部屋風来松